にほんブログ村 IT技術ブログへ
にほんブログ村

Linux ブログランキングへ

2014年07月27日

品質管理責任者から見る、世界を揺るがした「中国製チキン期限切れ問題」

マクドナルドやファミリーマートなど世界を激震させた
上海福喜食品の期限切れ食品が驚くべき事実をニュースしております。
今日はいつものパソコンマニアのKapperでは無く、
ものづくりを監督する品質管理責任者としてのプロの視点で
「上海福喜食品」の期限切れ食品問題を切り込んで見たいと思います。

○「上海福喜食品」の期限切れ食品問題
マクドナルトやケンタッキーフライドチキン、
ファミリーマートなど大手に供給している中国の「上海福喜食品」が
期限切れ食品を混ぜて供給していた問題です。
アメリカの食肉会社のOSIグループの中国工場です。
単なるポカミスでは無く、周到にデータを2重に改ざんし、
組織ぐるみで巧妙にユーザー監査も通り越していたという事です。
その他に過去に品質管理担当者が改ざんを強要されたといって裁判を起こしていたそうです。
中国当局の査察が入り、責任者が拘束されたそうです。

ここで行われていた品質管理とはどの様なものであったのか?
そして公開された情報から一体どういう品質管理が行われていたのでしょうか。
品質管理のプロの視点で考察してみます。

○品質管理の業務とは
まず基本に立ち返りまして品質管理と呼ばれる業務とは何でしょうか。
あまり世間でもよく知られていないのが一般でしょうか?

・品質の定義
品質の定義とは「お客様」が使われる要求を満たしたスペックの事で
広義の意味では「使えればなんでも良い」、
狭義の意味では「ものづくりで定義した規格に準じた決め事」でしょうか。
色々な意味がありすぎますよね。
その為、JISやISOで共通規格が定義されています。
この範囲内であれば問題なく使えるといった感じです。

国際規格ではISO9001に基づき品質マネジメントシステムの形で
品質に関わる全ての分野(企画、営業、製造、技術など)にまたがる
全社、全分野、全世界的な位置づけとなっております。
品質スローガンから数字目標、文章管理などを細かく取り決めてあります。
内部の監査と外部の監査を通じてルールの決めごとを管理しています。
PDCAのサイクルに応じて日々レベルUPするための制度です。
まあこんな細かい事を日常で行っている訳です。

○品質保証と品質管理
一般に品質をお客様に保証する役割として
品質保証と品質管理の2つに分けられるケースが多いようです。
品質保証が対外的、品質管理が対内的な活動を行います。

・品質保証はお客様に合格品のみを供給する責任部署で
 検査や出荷に関する全権限を持つと同時にクレームなどを対応する
 対外的な組織活動を示します。

・品質管理とは主に工場内で良品をつくり上げる為に必要な
 製造条件やプロセスを監視すると共に是正活動など
 技術、品証、製造などと協力して製造現場深くまで現地現物で切り込む業務を担当します。
 また原材料などのサプライヤーの監査、受入検査や成績書の検証を行い
 良品のみを受け入れる為の対外的なサプライヤーの指導を行います。

今回の事件では品質保証でなく品質管理がクローズアップされています。
内部の組織ぐるみの改ざんが表立った為でしょうか?
食品業界の場合は人の健康と安全に影響するので
刑事罰に起訴されかねません。
社会的制裁もあり得るのでコンプライアンスが重要になります。
だから品質管理担当者が裁判でデータの捏造の件まで出したのだと思います。

○品質管理の業務とは
大きく幾つかのレベルにて層別してみます。
主に連続ライン生産とバッチ生産にわけられまして、
連続ライン生産の場合、気づいた時には膨大な不良品が流れる事になるので
防止するためには特殊な手法をガンガン決めないといけません。
プロセスを決めて良品条件を設定するのは主に「設計」の仕事です。
それを守らせるのが品質管理の業務と言えるかもしれません。

0、変更管理を行い工程設計、プロセス条件と規格を決める(設計部門)
1、プロセス条件を理解しそれぞれのを管理項目を設定する
  ⇒QC7つ道具、新QC7つ道具、なぜなぜ分析、4M分析などを行って要因解析を行う
2、プロセス条件に管理図を設定する
  ⇒全ての品質管理の基本は管理図から始まります
3、プロセス条件の管理図に規格より厳しい管理限界線を定義する
  ⇒管理値を決めないとアラームが出ず不良が多発する事になります
4、管理限界線を超えた際に対応する処置とルールを決める
  ⇒不良になる前に是正するのが目的です。
  アラームをトップマネジメント含め全員に配信します。捏造は許しません。
5、決めた処置とルールを標準類(手順書、要領書)に落としこむ
6、異常が発生した際に対策会議を行い、問題の明確化と是正活動の
  担当者、納期、方法を決める。議事録を作成して記録を残す。
7、指摘事項の監査を行い決め事が守られているかを定期的にチェックする
8、RFC(異常処置チェックリスト)を作成し判定基準と処置をマニュアル化
  現場の判断で是正処置できる様にする
9、それぞれのデータをデジタル化し、異常をシステムで検知できる様にする
10、多変量解析を用いて特性に影響するパラメータを瞬時に割り出せる様にする
11、異常と是正の進捗の見える化を行い全員で共有する

実際に良品条件を決めるのは「設計」の仕事ですが、
それが実際に量産出来るかは別問題です。
時々、夢物語のデータを出してくる人も珍しくありません。
データを分析してあるべき姿まで是正して決めごとを管理するのが仕事です。
当然ながら原材料などの購入品やサプライヤーの製造管理条件まで口を出します。
自社の製造工程だけではどうしようも無い自体など少なくありません。

プロセス条件と一言で書きましたが、実際は設備の温度、圧力などから始まり
原材料、検査方法、作業時間まで多岐に渡ります。
品種毎の作り分けまで考慮しますと数百〜数千のパラメータを
一括管理して異常の検出と是正まで担当します。
勘コツ経験では対応できませんので高度な統計学的経験と
情報処理技術が要求されています。
当然、設備や現場を見る経験と設計条件や原材料に至るまでの深い製造知識が求められます。
また他人の職務領域まで介入して全てをひっくり返す行動力が求められます。
でなければデータを眺めるだけの置物に過ぎません。

よくある問題点としては上位の製造部長や技術部長、営業部長などが介入してくるケースです。
品質保証、品質管理が独立した組織でなければならない理由がその為です。
製造や営業は原価、利益、納期にお客様への責任がありますので
製品を出来るだけ流して出荷させたいのが仕事です。
それを政治力を行使して食い止める事までが品質管理の役割です。
組織の権力者に対し独自の政治力までを構築して対抗しなければ全く機能しません。
人間関係の構築までも視野に入れないといけないので非常に面倒な仕事です。
現場には鬼の様に嫌われますのでタフな精神力も時には必要になります。
俗に言うSな変態さんしかこの仕事は向いていないかもしれませんね。

今回の事件が発生してしまったのも製造責任者との
政治力に打ち勝てなかったのが品質管理上の課題だといえます。
だからこそ組織ぐるみの問題だと言われる所以かと思います。

○データを改ざんするという意図と組織的な隠蔽工作
ニュースの一部で気になる点があります。
製造データを改ざんして社内向けと社外向けに2重で作成していたそうです。
これは恐ろしい意味を持ちます。

秘密保持を目的として外部に製造条件を教えないのは
日本のメーカーでもよくやる手ですが、
このケースとしては別の意味で自社の工程能力が顧客の求める規格に
達成できない事を前提としています。
言い換えると工程能力が十分にあれば全く不要です。
意味のない無駄なコストを掛けて数字の作成に追われている事を証明します。
工程能力が低ければ素直に認めてバラつきの是正に全力を注ぐべきです。
工程異常や不適合で発生した不良品は手直し出来る物を除き全て廃棄しなければいけない。
そうしないと作業者や経営陣に数字で痛みが伝わりません。
自分の手塩を掛けた製品が廃棄される痛みは全員で分かち合わなくてはならない。
それで手直しや不良がゼロになる事で大幅にコスト削減が進むからです。
それが品質管理の正義です。

最終的には品質保証によって弾かれて良品だけが出荷されます。
所がこのニュースを見る限り、そういったベクトルとは逆の動きに進んでいます。


○数か月も期限切れした腐敗原材料の存在する理由
いったん返品された食品の生産日を改竄(かいざん)した上、
包装を替えて再び出荷していたと発表したそうです。
何故大量返品が発生しているのか、何故腐敗原材料が流れているのか?
これも不思議な理由です。何故こんな物が存在するのか?
理由は大きく3つ推定されます。

1、杜撰な生産計画の元、原材料を多数発注し
  仕掛在庫品として死蔵して倉庫に眠っている
2、原価低減の為、廃棄されている腐った原料を調達している
3、不合格品を無理やり出荷しようとした

恐らく3だと思いますが2だったら嫌ですね。
中国ならありえそうと言うのは大きな偏見ですが。
ただこれだけ世界のトップ企業に納めていて
連続生産にも関わらず2割も長期在庫があるというのは考えにくい。
と考えますと全て返品?受入検査ではねられ無ければ返品は無いはず?

仮にニュース通りで不合格品が2割も発生して
ユーザーから突き返されていると想定します。
これも恐ろしい話。だって返品って受け入れNGって事ですよ。
それも2割って事は数百〜数千tonレベルで。
出荷するという事は品質保証の合格印が押してあり、
検査成績書にも良品として判断された製品がそんなレベルで。
顧客側が受け入れ検査していないのによっぽどの問題が無い限り
そこまで突き返されるのはありえない。
多分、外観や臭いで異常があったのでしょうか?
大手なら特に普通そんな会社から購入しないですよ。危険すぎて。
でも気づかなかった、気づかせなかった。

で返品品を廃棄せずにまた混ぜて今度は加工品として
加熱処理して再度出荷する。
で異常に気付いた顧客がまた返品する。負のサイクルがあった訳ですな。



○受け入れ検査と工場監査の限界点





posted by kapper at 18:30 | Comment(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

にほんブログ村 IT技術ブログへ
にほんブログ村

Linux ブログランキングへ